第11章  悪人とヘタレとライバルたち

 アルビム連合、カガリたちの世界にある小さな群島国家、大洋州連合とオーブに挟まれた位置にあるこの小国は3年前に終結したプラント大戦後に独立を承認され、地球連合にも所属している地球上で唯一のコーディネイター国家である。
 一応首都は新たに建設されたアルビムと名付けられた都市に置かれているが、この地上に置かれた都市には行政機能が集中していて人口そのものは余り多くは無い。主要産業は人材を用いた技術開発協力などを除くと観光業であり、外国からの観光客や国内の観光客を楽しませるのが主な役割となっている。
 アルビム連合の居住区は地上ではなく海中や海底に置かれており、多くの海中都市が建設されて相互に繋がっていて、地上は海中に住む国民が遊びに来たり海外からの客を受け入れる窓口としての空港や湾港としての役割が置かれている。これは乏しい土地を有効利用する為という意味合いもあったが、他国から流入してきたコーディネイターの受け入れで急速に人口が拡大したせいでもあった。とてもではないが地上に住まわせる場所を用意できず、各地から移動させてきたスフィアを最初の居住地としてそれらの拡充を進めていったことがこのような国家建設に繋がっている。
 この他国に例を見ない海中国家とでも言うような様式は他国の注目を集めていて、この都市群自体が一種の観光地としても機能していた。アルビム連合自体もこの都市が売り物になると気付いてからは客を楽しませる為の工夫を凝らすようにもなっていて、アルビム連合の重要な外貨獲得手段にもなっていた。
 
 そんなアルビム連合の地上にある行政区画から少し離れた所にある小さな家には、この国にとって非常に重要な人物が住んでいた。この国のみならずプラントの要人からも敬意をもって遇される老人、イタラ老と呼ばれる老人は、自宅にある外線で珍しい人物と対話をしていた。

「そういう訳で、ソアラちゃんから相談を持ち掛けられたんじゃよアズラエル」
「……何かプラントとオーブが妙な動きをしているという報告は入っていましたが、まさかそんな事になっていたとはね」

 イタラが話していたのはかつてブルーコスモスの総帥を務め、軍需産業連合の理事も務めていた事があるムルタ・アズラエルであった。大戦中にカガリたちと協力して大戦を終結に導いた功労者でもあったがその功績を知る者は意外に少なく、世間からは昔ほどでは無いが恐れられている人物である。まあこれは彼の日頃の行いの悪さと、彼自身がその悪評をむしろ利用しているせいもあるので自業自得でもあった。
 そんな元ブルーコスモスの総帥とコーディネイター国家の要人とでは水と油のように思えるが、何故かウマが合うようで大戦の頃から何かと一緒に行動していることが多かった。この両者の奇妙な友情の間にはカガリとフレイが居て、結果的に地上のコーディネイターたちの立場の改善に大きく寄与していたりする。

 そんな昔からの関係もあってカガリとフレイに対して個人的に友人として付き合ってきたアズラエルは、イタラから2人が行方不明になったらしいと聞かされて穏やかでは無かった。

「事情は分かりましたが、代表が行方不明になったにしてはオーブの動きがおかしくないですか。もっと大騒ぎしていていい筈では?」
「それは儂も悩んどる所なんじゃ。カガリ嬢ちゃんが行方不明になったなんて事になればユウナの坊主が大騒ぎして捜索の協力を求めてきそうなもんなんじゃが」
「それが未だに何の音沙汰も無し、ですか」

 カガリが居なくなったにしてはオーブの動きが不自然な程に少ない。まるでどこに行ったのかは分かっているかのようだ。だがソアラからはフレイとトールがカガリと一緒に姿を消していると言ってきている。あのメイドがフレイ絡みで相談してきている以上、疑う余地は無いというのが2人の共通認識だ。
 ただ、なぜそこにプラントが絡んでくるのかが分からない。ソアラからの話ではオーブ駐在武官のアスラン・ザラも姿を消しているらしいが、まさか2組のカップルで仲良く駆け落ちしたわけでもあるまいし。
 モニターの前で胸の前で腕組みをして悩んでいるアズラエルに、イタラは一つの提案をしてきた。

「どうじゃアズラエル、このまま悩んでおっても埒が明かんじゃろうし、直接乗り込まんか?」
「オロファトの首長府に乗り込むと言いますか?」
「儂とお前なら向こうも言い逃れは出来んじゃろう?」
「……どうせなら、他も巻き込みますかね。実はほぼ同時期に大西洋連邦でも妙な事件が起きてましてね。その原因が掴めるかもとなれば乗って来るでしょう」
「事件じゃと?」
「ええ、宇宙の軌道ステーション近くで、1隻の軍艦が忽然と姿を消したそうですよ」
「軍艦が姿を消したじゃと、ステーションの傍ならば目撃者も居たのじゃろう?」

 イタラはどういう事だとアズラエルに問う。大勢の目がある筈の宇宙ステーションの傍で軍艦が姿を消したというのならば、文字通りに消えたという事なのだろうか。大西洋連邦が慌ててるという事なら完全に予定外の事態なのだろうが、忽然と消えるなどという事が起きるのだろうか。
 アズラエルはイタラの疑問を当然の質問だと頷いて話を続けた。

「私も映像記録を見たのですが、一瞬光ったかと思ったら戦艦並みの大きな船が文字通り掻き消えていたのですよ。そんな事があり得るのかと思いましたがね」
「冗談でそんな映像を作ってお前を騙すほど大西洋連邦も暇ではあるまいな。カガリ嬢ちゃんたちの事も考えると、すぐ傍にあるオーブのステーションで何かが起きたという事かの?」
「状況証拠だけではありますが、その線が濃厚ですね。もしかしたらプラントも絡んで何かやっていたのかもしれません」

 ただ金欠に喘いでいるオーブにそんな実験をする余裕があるとも思えず、原因はプラント側なのではないかとアズラエルは疑っていた。そしてアズラエルは大西洋連邦には自分から話を通すからプラントへの対応をイタラに頼み、通信を切った。



 モニターからアズラエルが消えたのを見てイタラは右手で顎髭を弄りながらどうしたものかと考えて、まずあいつらに話を通すかと決めて廊下への扉を開けて自分の秘書的な女性の名を呼んだ。

「アーシャ、ちょっと頼まれてくれんかな」
「どうしましたかイタラ様、アズラエルさんとのお話は終わったんですか?」

 呼ばれて奥から姿を見せたのはアーシャ・マクラレン。イタラの秘書兼世話係とでも言うような立場に気が付いたら収まってしまっていた女性で、昔に漂流中の所をアークエンジェルに拾われて助けられたことでカガリやフレイと奇妙な縁を持つことになった女性でもある。
 イタラはアーシャを呼ぶとプラントと回線を繋ぐように頼んだ。

「アーシャ、悪いがプラントに居るシーゲルに連絡を取ってくれんかの」
「シーゲル様にですか。釣りの予定は入っていませんよね?」
「団体釣り客の話では無いぞ、ちょっと相談事があるだけじゃよ」
「……アズラエルさんと話した後で相談事、ですか?」

 アーシャが訝しげな眼でイタラを見る。この2人が相談していたのだから絶対に変な事を考えているのだろうが、そこにシーゲルを入れるとは何を企んでいるのだろうか。

「別に悪巧みでは無いわい、話が纏まったらお前にも教えてやるから頼む」
「分かりましたが、本当に悪巧みじゃないんですよね?」
「どっちかと言えば人助けじゃよ」

 孫のような年ごろの娘に疑いの目を向けられて傷付いてますアピールをしながらイタラが頼むと、アーシャはそんな顔しても誰も信じてくれませんからねと突っ込みを入れて別室へと向かった。地球上ならともかく、プラントとの間で通信回線を開くには多少の準備が必要なのだ。





 通信を終えたアズラエルは深刻そうな顔で暫く考えていると、室内に居たもう一人の男が声を掛けてきた。

「中々面白い事になっているようではないか、アズラエル?」
「……貴方には報告に戻ってもらっただけのつもりだったんですがねえ、ネオ・ロアノーク君」

 アズラエルに話しかけてきたのは顔の上半分を暗灰色の仮面で覆い、大西洋連邦の制服を黒系に色に塗り変えた制服を着ている怪しい男だった。襟には大佐の紀章があり、一応大西洋連邦軍の軍人のように伺える。
 アズラエルは右肘を机に乗せて頬杖をついて顎を乗せ、何とも憂鬱そうな顔でこの怪しい男を見る。

「出来ればファントムペインを使うような事態にはなって欲しくは無いですよ。貴方はボヤを無駄に煽って大火にして喜ぶ悪癖がありますからね」
「失礼な言われようだな、無駄に火を煽った事は無いつもりだが?」
「確かに結果的に必要な事だったのは認めますが、相談も無しにやられると迷惑なんですよ」

 この男、どういう嗅覚をしているのかは分からないが大火にして事態に介入し易くして、そこに潜んでいる目標を仕留めるという事を繰り返し成功させてきている。おかげで非常に迷惑ではあるのだが実績も上げているのでアズラエルとしては腹立たしいが切り捨てるには有能過ぎて、手綱から解き放つのは危険過ぎて首も切れない。
 この男が世界の裏側に隠れているターミナルや、更に一族と呼ばれる勢力の弱体化にも成果を上げていて、アズラエルにとっては本当に信用出来ないが極めて有能という厄介極まりない人材となっている。役に立つという点では彼と組んでいるアレックス・ディノを大きく上回っていて、しかも与えられた任務には極めて忠実に動くという変な真面目さも持っている。

「それで、火星ではどうだったんです。彼は元気ですか?」
「ああ、変わり無しだよ。ヘタレぶりは悪化してる気がするがね」
「ヘタレねえ。カガリさんの評価ではただの駄目男だそうですが」
「なるほど、駄目男か。実に正しい表現だな」

 ネオはカガリの評価になるほどと頷いてくっくっくと怪しい笑い声を漏らす。そして顔を上げると、なんだかうんざりした顔になった。

「駄目男という評価には同感だが、本当に何とかならんのか。彼の泣き言を延々と聞かされる私の身にもなって欲しいものだ」
「それは仕方ないですね、彼のスカウトに乗った我が身の不幸と諦めて下さい」
「こちらとしては堪ったものでは無いのだがな、何が楽しくて好きな人に会えない愚痴なんてものを半年も聞かされねばならんのだ」
「まあその辺は給料分という事で。しかしどんな事を言っているんです?」

 悪戯っ気のある笑みを浮かべて聞いてくるアズラエルに、ネオは右手で仮面の下の顔を押さえて何とも疲れた声で一月半ほど前の事を語りだした。




 そこは眼下に赤い台地が広がる星、火星を見下ろす火星のコロニーであった。火星開拓を目的に大量に作られたこのコロニー群は、プラントと同じように大半がコーディネイターの住民で運用されている。
 火星と地球を結ぶ定期便となっている極東連合のヤマト級惑星間航行戦艦が訪れる宇宙港のあるコロニー内にあるコーヒーショップにて、2人の男性がボックス席で向かい合うよウに座っていた。1人は頭部の上半分を覆う怪しい仮面を付けず、サングラスをかけただけのネオ・ノアローク大佐で、もう1人はコーディネイターにしては整っていない、ナチュラルと言った方が良いような平凡な容姿の青年であった。
 ネオ大佐は無言でコーヒーカップを口に運んでいて、青年は自分の前に置かれたカップをじっと見つめている。

「……離れている時間が、愛情を深めると言いますよね」

 青年の呟きを聞いたネオ大佐の持つコーヒーカップが苛立たし気に揺れる。青年は目の前に座る人物の苛立ちなど気付く様子もなく言葉を続けていた。

「最初は奇麗な女の子だなってただ憧れるだけだったんです」
「…………」
「でも声を掛ける勇気も持てなくて、ずっと憧れるだけで、それが酷い人がヘリオポリスを攻撃したせいで全てが変わってしまって」
「…………」

 ネオ大佐は明らかに苛立っていて不機嫌そうな空気を周囲に撒き散らしていたが、ヘリオポリスの事を言われた時はちょっとだけ怯みを見せた。そして青年は目の前の男の勘所の動きなど全く気にする様子も無く話を続けている。

「彼女が僕の傍に来てくれた時は嬉しかったんですよ。でもそれが同情なんだと思って、僕が悪いんだから傷付けてしまった彼女を守らなくちゃって思うようになって、1人で決め付けちゃって、今思うとなんであんなに暴走してたのかなって思うんですけどね」
「……そうかね、それは良かったな」
「何時の間にか守ってるつもりの僕の方が守られるようになってて、彼女は1人でどんどん先に進んじゃってて、隣に立てるように頑張ろうって思って、でも上手くいかなくて、気が付いたら会えない時間のが増えちゃって」
「…………」
「彼女の気持ちに答える勇気も持てないまま、優しさに甘えてズルズルと来ちゃって、自業自得とはいえ本当に会えなくなってしまって、世界が色褪せて見えちゃう時があるんですよ。寂しいというか、そんな感情に苛まれるんです」

 ネオ大佐から放たれる不機嫌なオーラが殺気さえ帯びてきて、中に居る他の客たちが逃げるように店を後にし店員たちも怯えたように物陰に隠れてこちらを見ている。これでもまだ気づかないのだから青年は鈍感というレベルでは無い。

「彼女の事を思い浮かべるだけであったかい気持ちになれて、でも彼女が居ないことが辛くて、会いたくても会えなくて、切なくて……」
「そんなに色々抱え込んで拗らせるくらいなら、私の代わりに地球に戻れば良いだろう」
「何を言ってるんです。会ったら最後、二度と離れられなくなるじゃないですか。それくらい察してくださいよ」
「そんな事私が知った事ではない。大体何で私が君の為にアルスター嬢の盗撮写真や盗撮映像を持ってこなくてはいかんのだ」
「僕が会いに行けないからに決まっているでしょう」

 何を言ってるんです貴方は、と真顔で言い返してくる青年にネオ大佐は軽蔑交じりの呆れた視線をぶつけてきた。この犯罪のような願いを託している青年こそアレックス・ディノ。ロゴス直属の私設部隊であるファントムペインに籍を置いてアズラエルの指示で動いている工作員の1人で、かつてはキラ・ヤマトと呼ばれていた男でもある。
 ネオ・ロアノーク大佐もかつては世界にその名を知られた歴史的な大罪人ラウ・ル・クルーゼと呼ばれた男である。プラント大戦末期に発生したザルクの反乱の終盤にて計画の失敗を悟った彼は特等席で最期を迎えようとしていたのだが、そんな彼をキラが説得して自分の計画に巻き込んでしまい、共にロゴスの犬となってアズラエルの下で働くようになったのだ。

「全く、君とアルスター嬢が折角最後の時を楽しもうとしていた私の隣で延々と痴話喧嘩を繰り広げてくれたせいで、3年も君に付き合わされる羽目になるとはな」
「良いじゃないですか、愚痴くらい付き合ってくださいよ」
「ヘタレの戯言など付き合っていられるか!」
「誰がヘタレですか誰が!」
「ヘタレが嫌なら根性無しでも良いぞ。大戦の頃は君に同情もしていたのだがな」

 まさかここまで情けない奴だとは思わなかったとネオは残ったコーヒーを一気に飲み干すと、カップをソーサーに戻してアレックスを睨みつけた。

「大体、地球に居た頃は何度も彼女の顔を見に行っていたのだろう。何でその時に会っておかなかったのだ。そうすればここまで拗らせなかっただろう!」
「フレイに勘付かれないように遠くからこっそり見ていただけですよ、直接会うなんて出来る訳無いでしょう!」
「威張って言うような事かね?」

 感情を昂らせて睨み合う2人。これがかつて世界を滅ぼそうとした男と世界を守ろうと戦った男だとは、極一部の理解者以外には信じられない光景だろう。ネオは付き合い切れんとばかりに椅子に腰を降ろして肩を竦め、顔を赤くしているアレックスを見る。

「直接会うのが怖いなら、ここから私用で通信は難しいだろうし私が運んでやるから手紙でも書けば良いだろう。アルスター嬢も喜ぶぞ」
「……手紙なんて書いた事無いです」
「それくらい好きに書け、何処までヘタレなのだ君は?」

 なんで私がこの男の尻を叩かなくちゃならんのだとネオは怒っている。こんなのが自分が拘っていた最高のコーディネイターかと思うと昔の自分がただの馬鹿に思えてきて何とも情けなくなってしまう。

「そんなに辛い事ばかり溜め込んでいては、いずれ心が壊れるぞ、私のようにな」

 フラガ家に係る辛い記憶と未来の無い自分を悲観して人類全てに復讐を考え、実行に移した男だ。その言葉には何物にも勝る重みがあったが、それを聞かされたアレックスは何故か笑っていた。

「……寂しくて悲しくて、泣き続けた辛い記憶も、楽しくて嬉しくて笑ってきた記憶も、全部大切な思い出ですよ」
「アレックス君?」
「フレイが言っていたんです、辛かった事だけじゃなくて、楽しかった事や嬉しかった事を思い出して、全部を思い出にしていくんだって。そうしないと、何もかも悲しい記憶になっちゃうからって」
「そうか、彼女がな」

 全ての過去を悲しい記憶へと変えた自分を思えば、彼女の言葉は多分正しいのだろう。だが、そのような回答に辿り着くとは彼女はどういう経験をしてきたのだろうか。それともこれがアズラエルたちが言っていた調停者というものなのだろうか。
 そんな女性と一緒に居たから、この男は奪い尽くすだけのこの世界で心を壊さずにいられたのだろう。そう思うと、この男は運が良いのかもしれない。

「中々、難しいアドバイスだな。それを実践出来る者がどれだけ居るのか」
「そうですね、難しいです。でも、それで立ち上がれた人たちも居たんですよ」

 大戦の頃はカガリとフレイで難民の人を励ましたり色々世話してたりして、気が付いたら落ち込んでいた人たちが顔を上げるようになって、ちょっとずつ変わっていったんですよとアレックスは懐かしそうに言う。
 それは間近で見てきたキラだからの意見であったが、少し離れてみてきたイタラたちはより多くの人たちが影響を受けていた事を知っている。それが積もり積もって、遂にはクルーゼの計画すらも土壇場で引っ繰り返してしまったのだ。クルーゼがその事に気付いたのは、自分が倒すべきだったのはパトリックやウズミではなくカガリだったと気付いたのは、プラント本土決戦で彼女が崩壊しかけていた地球艦隊を叱咤激励して立ち直らせ、艦隊を建て直してしまったのを見た時だった。
 まさか何年も周到に準備してきた計画をあんな小娘に引っ繰り返されるとは思わなかったとネオは忸怩たる思いで回想していたが、その結果として自分の思い描いていた未来とは少し違う、滅びの道を辿る筈だったのに運命を回避しようとしている人類を見ることが出来たのだ。その意味では面白い物を見せてくれたという感謝も彼の中にはあった。
 もしかしたら、自分も彼女たちと関わって変わってしまった人間の中に入っているのかなと思って苦笑いを浮かべていると、アレックスが音を立ててテーブルに両手を付いた。

「だから、楽しい思い出の為にフレイの写真が必要なんですよ!」
「そこは写真ではなく直に会う所ではないのかね!?」

 こうなったら眠らせて箱詰めしてオーブのアルスター邸に出荷してやろうかと物騒な考えが頭に浮かんで、良い考えではないかと思って早速どうやって箱詰めするかを考え出す。この男、もうこの情けないヘタレ男を返品出来るなら何でも良いと思っているようであった。

 結局、アレックスを生きたまま地球到着までの一か月半ほど箱の中で生かしておく手段が思いつかず、彼はこの計画を実行に移すことは無く地球へ戻るヤマトに乗船する事になる。火星を離れる際にアレックスに写真と映像を頼むと泣き付かれ、心底嫌そうに引き受けて彼を振り払って船に乗り込んでいった。


 この話を聞かされたアズラエルは可笑しくてたまらないようでデスクに突っ伏して声も出ないほどに笑って拳で机を叩き続けている。そのうちに本当に呼吸が危なくなってきたのかプルプルと痙攣をはじめ、涙目で息をしようとしているがまた笑いだすという事を繰り返している。
 危うく笑い転げて死にそうになったアズラエルはどうにか呼吸を整えると、改めてネオを見た。

「それはまた、何と言いますか」
「全く、あれではアルスター嬢と再会したらショック死するのではないのか。再会の約束までもう2年を切っているのだろう?」
「え、2年?」
「違うのかね、彼がそう言っていたが。確かアルスター嬢が20歳になるまでには帰るという約束なのだろう?」

 アレックスがもう2年も無いと言っていたが、とネオが言うと、アズラエルは訝しげな顔になった。

「おかしいですね、フレイさんは今年20歳になる筈ですが」
「……つまり、彼は彼女の年を1才分勘違いしていると?」
「そうなりますね。つまり彼に残された時間は2年も無いじゃなくて1年未満という事です」
「ほぉう、それはそれは、なかなか面白い話を聞いた」

 アレックスがフレイの年を勘違いしているのではないかというアズラエルの話に、ネオは悪人面に禍々しい笑みを浮かべて何とも言えないようなくぐもった笑い声を漏らしだした。その様はアズラエルですら身を引くほどに禍々しく、全身から怨念が漏れ出ているようにさえ思える。
 そしてネオはようやく笑いを収めると、実に楽しそうにアズラエルを見た。

「アルスター嬢が20歳になったらか、そうかそうか」
「悪い顔してますねえ、今度は何をするつもりです?」
「悪い事など考えてはいないさ、若い2人の恋路を応援してやろうというのだよ」
「100%私怨に思えますがね?」
「アルスター嬢には悪い話では無いだろう、探す手間が省けるのだから」
「その前に彼が帰ってきたらどうするんです?」
「帰ってくるだと、ありえないと断言しよう」

 あの駄目男にはそんな甲斐性は無いよと言い切るネオに、アズラエルは彼も拗らせてますねえと呆れた顔になった。あれでラクスが危ないと知ったらすぐに駆け付けてくるのだから、フレイが行方不明になったと知らせてやれば案外吃驚して戻って来るのではないかと思うのだが。

「フレイさんとカガリさん、トール君が行方不明になったと教えてやれば戻って来るのでは?」
「来るかもしれんが、どんなに急いでも二か月近くかかるのだぞ?」
「流石にそれだけの間行方不明というのは洒落になりませんね」

 どうしたものかとアズラエルは腕を組んで考え込む。オーブとプラントが何を隠しているのかは分からないが、カガリとフレイが関わっているとなると、何かとんでもない事が起きているような予感もするのだ。
 アズラエルは経営者の顔に戻ってネオを見ると、念のためファントムペインの準備をしておくように命じることにした。

「ネオ君、ファントムペインを何時でも動かせるように準備をお願いします。ラクス紛争の再来みたいなことは勘弁して欲しいですが、万が一もあり得ますから」
「彼女たちは誘拐されたかもしれないと思っているのか?」
「もしかしたらターミナルや組織の残党が悪さをしているかもしれませんから」
「なるほどな、2人は我々のせいで攫われたかもしれないと思っているのか」

 世界を裏から操っていた連中についてはアズラエルも知ってはいたが、戦後にネオやアレックスたちを使って調査を進め、相容れないと判断して彼らとの敵対を選んだ。以前の彼であれば協力関係になろうと画策したかもしれないが、今の彼はああいった存在とは相容れなくなっている。
 そういう意味ではかつて世界を滅ぼそうとした狂人とはいえ目の前に居るネオはまだ信用出来る相手になるらしい。

 ネオは踵を返すとファントムペインの新造艦とやらを見させてもらうと言って部屋を後にし、残されたアズラエルは椅子に背を預けて天井を見上げて厄介事になりそうですねえと呟いていた。





 地球でかカガリたちが姿を消したことが徐々に騒ぎとなりだしていた頃、プラントでも行方不明となったアスランを探すためにかつての仲間たちがイザークの下に結集しようとしていた。ジュール隊の司令部オフィスにて書類を纏めて居たイザークは、内線の呼び出し音を聞いてデスク上の通話機の受信ボタンを押して通話状態にする。

「俺だ、どうした?」
「シホ・ハーネンフース隊長が到着されました」
「そうか、こちらに通せ」

 懐かしい名にイザークは表情を緩め、書類をデスクにしまって客人を待つ。少しして扉をノックする音がして、イザークが扉のロックを解除すると扉がスライドし、室内に3人のザフト士官が入ってきた。白服を着た女性と、それに続くように黒服を着た2人が入ってくる。
 イザークのデスクの前まで来た3人は横並びになって敬礼をしてきた。

「お久しぶりです、ジュール隊長」
「ああ、良く来たなシホ。少し見ない間に立派になったようだ。ジャックとエルフィも黒服が似合うようになったな」
「よしてくださいよジュール隊長」
「私は緑服の方が似合っていたと思うんですけどね、事務屋が黒服来てもしょうがないと言ったんですよ」

 3人はそれぞれの笑顔でイザークに返している。シホ・ハーネンフースはかつて特務隊に配属されて地獄のような戦場を駆け抜け、終戦時はジャック隊に配属されてジャックの部下として戦い抜き、今ではザフトでも有数のエースパイロットとなっている。
 戦後になって赤服が緑服の下に居るのは不味いという事になり、シホ本人の反対を無視する形で部隊の再編成が行われて新たにハーネンフース隊が編成されたのだ。この事にシホは怒っていたがジャックとエルフィは仕方が無いと笑って受け入れている。実際にエリートであるシホが一般兵であるジャックの下に置かれていたのが異例な事で、敗戦間近の緊急処置としてアスランが押し通した人事だったのだ。
 今はシホ隊長の元でMS隊を束ねるジャック・ライアンと、参謀として補佐するエルフィ・バートンという体制となっている。だが今回のイザークの招集はハーネンフース隊ではなく、この3人だけを個人的に呼んでいた。

「3人とも、事情は分かっているか?」
「はい、フィリスさんから伺っています」
「ザラ隊長が消息不明だとか」
「話を聞かされた時は驚きましたよ」

 イザークは3人にソファーを勧め、3人が並んでソファーに腰掛ける。それと机を挟んで向かい合うように対面のソファーに腰を降ろしたイザークは、ジャックを挟んで座っているシホとエルフィに相変わらず仲が良いなと笑みを浮かべ、そして3人に今掴んでいる情報を伝えた。

「状況はどうも妙な事になっているらしい。アスランと連絡が取れなくなった時に俺はオーブのフレイに協力を求めようとしたんだが、通信に出たソアラさんからフレイとトールがほぼ同時期に行方不明になったと聞かされたんだ」
「フレイさんと、トールさんがですか?」

 エルフィが驚いた声を出す。フレイは大戦時に色々世話になっていてエルフィとシホ、そしてイザークの参謀長を務めているフィリス・サイフォンは彼女と仲良くなり立場を超えた友人となっていた。そのフレイが行方を晦ませたと聞かされては平静でいられないのも無理は無い。
 だが、そこでジャックが間抜けな事を言ってしまった。

「まさか、ザラ隊長と駆け落ちとか?」

 言った途端、エルフィに左から肘鉄を腹に叩き込まれて体を曲げて悶絶するジャック。それにシホがオロオロしてジャックを心配し、エルフィが馬鹿なこと言ってるんじゃないとジャックを横目で睨む。

「何馬鹿なこと言ってるのよあんたは」
「い、いきなり、これは酷くないか?」
「エルフィさん、加減してください」
「フレイさんと隊長が駆け落ちなんてする訳無いでしょ、それにトールさんも居なくなってるのよ」
「だから冗談だってば」

 あのくらいの冗談で肘は勘弁してくれとジャックは呻くように言って体を起こした。昔からエルフィはジャックにだけは容赦が無いというか遠慮が無く、ジャックがぼけてエルフィが突っ込んでシホが慌てるというのがもはや様式美と化している。ハーネンフース隊ではこの流れが決まると安堵の空気が流れるほどだ。
 ジャックを悶絶させたエルフィは一つ咳払いを入れるとなんだか懐かしそうにしているイザークに向き直った。

「なんですジュール隊長?」
「いや、お前らの漫才も久しぶりだなと思ってな」
「漫才じゃありませんよ、ジャックのボケが治らないだけです」
「仲が良くて結構な事だな。そういえばレイとルナマリアはどうしているか知ってるか?」

 イザークがもう1つの懐かしいチームの事を問いかけると、エルフィは困り顔になって横を向いて頬を掻きだした。

「ああ、それは、ですねえ」
「どうした?」
「……少し前にグラディス隊に配属されてレイを隊長にしたMS隊を編成したんですけど、その、前に久しぶりに会ったら何て言うか、レイが死んだ魚のような目をしてまして」
「何があったんだ?」
「それが、部下がルナだけでは少ないので同期の女性が配置されてたんですけど、その娘がルナみたいなタイプでして」

 部下にルナマリアが2人、という状況を想像したイザークは胃が痛みだしそうな感覚を覚えてなるほどと納得してしまった。それは我が身の不幸を呪いたくもなるだろうなあと思ってしまう。

「それはまた、災難だな。何て名前なんだ?」
「アグネス・ギーベンラートさんです。何と言うかとにかく前向きで全力でって感じの娘でしたね」
「ああ、それでルナマリアが2人か」
「ちなみにザラ隊長狙いだそうです」
「……アスランが姿消したの、それが理由じゃないよな?」

 アスラン自身はラクスが好きだ、というのはイザークたちには共通認識だ。エルフィもアスランがぶれないので諦めたくらいだ。強いて言うなら戦後にプラントからアルビム連合に移住したミーア・キャンベルには多少情があるようで、ミーアだけはアスランも拒絶しようとはしていない。大戦中にラクスの身代わりとしてアスランと関わり、アスランもラクスとは違う魅力を持つ彼女に惹かれる所があったようで、戦後にはラクスとミーアがアスランを挟んで睨み合う事もあった。
 だがそれとは別にアスランにアタックを続けているのがルナマリアとメイリンのホーク姉妹で、そこにまた1人追加されたとなると、アスランは彼女たちから逃げ出しただけという可能性も出てきた気がするのだ。

「駆け落ちはまあ置いとくとして、フレイの手引きでルナたちから逃げたとか、実はミーア・キャンベルの所に転がり込んでるなんて可能性もあるのか?」
「そこまで追い詰められてはいないと思うんですけど」

 それは無いと思うんですがとエルフィは苦笑するが、イザークは真剣に考え込んでしまった。アスランが逃げ込める場所として一番可能性が高かったのはフレイの家であって、それが違うとなったら次に可能性があるのはミーアの所くらいしかない。彼女の元には連絡を入れていないので、もしかしたら本当にミーアの家に転がり込んでいる可能性は否定できない。
 そこまで考えていると、執務室の扉が開いてお盆にコーヒーセットを乗せた黒服の美しい女性が入って来た。ストレートの長い金髪を背中に流してるその女性は大戦時から一貫してイザークの補佐役を務めていて、現在ではジュール提督の参謀長をしているフィリス・サイフォンであった。

「エルフィ、ジャック、シホ、久しぶりですね」
「あ、フィリスさん、お久しぶりです」

 懐かしい同僚の顔を見てエルフィが嬉しそうに挨拶を返し、ジャックが少し辛そうな顔で片手を上げてシホがお辞儀をする。そんな3人を見てフィリスは小さく笑いがらお盆をテーブルに置き、コーヒーを配ってイザークの隣に腰を降ろした。

「それで、どういう話になったんです。ミーアさんがどうとか聞こえましたけど?」
「ああ、アスランだがひょっとしてミーア・キャンベルの所に転がり込んでるんじゃないかって話になってな」
「アルビム連合ですか、確かにザラ隊長が地球上で逃げ込めそうな場所はフレイさんの屋敷を除くとミーアさんの所くらいでしょうが……」

 あのザラ隊長にそんな真似が出来ますかねとフィリスは首を傾げる。ラクスが亡くなった今となってはアスランが意識している相手はミーアくらいというのは確かだが、だからといってアスランに彼女の所に転がり込む覚悟があるとも思えない。
 そしてフィリスはエルフィが自分の淹れたコーヒーを口にしたのを見て、彼女に感想を求めた。

「どうですエルフィ、私の淹れたコーヒーの味は?」
「う~ん、大分腕を上げましたねフィリスさん、美味しいですよ」

 コーヒーを淹れる腕前は名人とまで言われたエルフィに褒められたフィリスは嬉しそうに微笑んだ。隣とジャックとシホもコーヒーの香りを楽しんだ後口に含み、満足そうに頷いている。そのまま暫くコーヒーを楽しんだ5人は、コーヒーを飲み終えると改めてどうするかを話し合い始めた。

「アスランが居なくなったのと時期を合わせてうちの外務委員会が妙に慌てている事が分かっている。ソアラさんの話を聞かされた後でフィリスにその辺を探ってもらっていたんだが」

 イザークはプラントでも妙な事が起きていることを告げて、フィリスに続きを促した。それを受けてフィリスが話し始める。

「最初は外務委員会だけでしたが、どうも評議会にまで問題が上げられているようです。オーブから何かの問題が持ち込まれたのも確かなようですが、内容までは分かっていません」
「やっぱり、オーブで何かがあったんですね。それも2国で国際問題になるような大事件が」

 フィリスの話にシホが深刻そうな顔になる。何が起きたのかは分からないが、評議会まで動いているとなれば冗談では済まされない。もしかしたらオーブとの武力衝突という事態にも至るのかもしれない。
 だが、フィリスの話はこれで終わりでは無かった。もっと薬価ない問題も起きていたのだ。

「それと、これは関係あるのかは分かりませんが、ほぼ同時期に地球の軌道ステーションの傍で大西洋連邦の軍艦が消失したそうです」
「どういう事だ、ステーションの傍で軍艦が消失?」

 そんな事があり得るのかとイザークが訝しげな顔になる。

「何が起きたのかは分かりません。ただ複数の目撃者がいたようで、一瞬光ったと思ったらそこに居たはずの軍艦の姿が消えていたと」
「ミラージュコロイドの実験とかではないのか?」
「その後に周辺の捜索が行われたようです、実験であればそのような事はしないでしょう」
「……突然姿を消したアスランたち、消えた軍艦、おかしな動きをしているプラントとオーブか。何が起きているんだ?」

 おかしな偶然もここまで重なれば必然だ。間違いなく何か大きな問題が起きていて、アスランたちはそれに巻き込まれたのだろう。そしてプラント上層部はそれが何かを知っている。
 イザークは厄介な事になったかもしれないなと舌打ちしたが、それにシホがそうでしょかと首を傾げた。

「プラントとオーブだけの問題でしたら手を出せないかもしれませんが、大西洋連邦も巻き込まれているのでしたら、いずれそちらから動きがあるのではないでしょうか?」
「消失した軍艦に付いて大西洋連邦は捜索をしているだろうな」
「はい、いずれ彼らはプラントとオーブが関わっている事に気付くはずです。その動きに気を付けていれば、網にかかると思いますよ」
「……出来そうか、フィリス?」
「可能とは思いますが、大西洋連邦も巻き込まれているとなりますと、私よりも先に動く方々が居ると思いますよ」
「俺たちよりも先に?」

 不思議そうに聞き返すイザークに、フィリスは私たちが協力を求めるのは難しい相手なんですがと困った顔になった。

「カガリさんとフレイさんが巻き込まれたとなりますと、多分ムルタ・アズラエル氏たちが動き出すと思います」
「……ああ、あの怖い人かあ」

 昔に何度か会った事があるエルフィが一瞬体を震わせる。ブルーコスモスの総帥でロゴスの理事という自分たちにとっては天敵のような経歴を持つ男であるが、困った事に彼はカガリやフレイの友人で、更にステラを助けてくれた人でもある。ステラ達の治療が終わった時のパーティーでは一緒に騒いだ間柄でもあり、怖い人というイメージは拭えないがきっと助けに動いてくれるという信頼はあった。
 それに、アズラエルが動くなら多分他の有力者たちも動き出す筈だ。彼らが動き出せば、自分たちよりも遥かに大きな力をもって介入してくれる。そうなれば自分たちが関わる隙も生まれるはずだ。
 だが、そこにジャックが待つ必要は無いんじゃないかと言ってきた。

「待たなくてもこちらから動けるんじゃないか?」
「どうするのよジャック。私たちが関われるような相手じゃないでしょう?」
「俺たちじゃな。でも、ソアラさんなら伝手があるんじゃないか?」

 フレイの関係者であるソアラなら、彼女に関わる様々な有力者にも伝手があるのではないかというジャックに、その場に居る全員が意表を突かれた顔になった。

「そうか、ソアラさんに頼めば連絡を取れるのか」
「考えもしなかった方法ですが、フレイさんが絡んでいるなら確かに協力を得られますね」
「あの人にだったら、連絡を取っても怪しまれることもありませんね。妙案ですジャックさん」
「あんたにしては冴えてるじゃない」

 口々に賞賛の言葉を向けられてジャックが照れ臭そうに身動ぎした。これで方針が決まり、ソアラに協力を求めて何が起きているのかについて地球側の有力者への連絡を付けてもらうことになった。それは、オーブとプラントが最も望んでいなかった事態のエスカレートを招く事になってしまう。


ジム改 元の世界側でも事態がいよいよ拡大を始めました。
カガリ キラが別の意味で壊れてるんだが?
ジム改 こっちのキラは壊れなかったから精神的には問題無いけど重度のヘタレだから。
カガリ クルーゼのが常識人になってるし。
ジム改 好きな人に会えない寂しさでちょっと追い詰められてるだけだよ。
カガリ ちょっとかこれ?
ジム改 まあ良いじゃないか、これでほぼ出番終わりだし。
カガリ え、もう?
ジム改 だって設定上キラはずっと火星に居たことになってるし。
カガリ 出したくても出せないってキャラなのか。
ジム改 キラVSキラという展開は最初から候補に無かったの。
カガリ カズィでさえ出番あるのに。
キラ  いや、見てくれてる人は絶対僕と向こうの僕の対決を期待してるでしょ!?
ジム改 あ、出番がほぼ終わった元主人公さん。
キラ  なんでトールやアスランが行ってるのに僕が行けないのさ!
ジム改 フレイは火星で再会するまでキラとは一度も会ってない、という前提があるから。
キラ  今の僕はアレックス・ディノだからOKにしてよ!
ジム改 こっちの1期1話の延長みたいな幸せだった頃の自分を見たら、向こうのキラが壊れて昔に戻っちゃいそうなんだよな。
キラ  気にしすぎだよ。
カガリ はいはい、お前は次の出番まで楽屋裏に行ってろ。
キラ  カガリの意地悪――!
カガリ 泣きながら走って行っちゃった。
ジム改 まあ行くのは不可能じゃないんだけど、行ったのがばれると不味いんだよね。
カガリ ところで、こっちだとマティスとか生きてるのか?
ジム改 アズラエルたちに攻撃されたおかげで逆に死亡イベントに関わる余裕を無くした扱いだな。
カガリ 運が良いのか悪いのか。


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