序章
月の上空で行われている最後の戦い、マイティフリーダムと斬り結ぶカルラ。その機体をフリーダムの刀が切り付けたとき、決着はついた。
爆発寸前の機体の中で後席に居たイングリッドは今際の際のこの時になってやっとオルフェへと寄り添い、その頭を抱いてその想いを口にしたが、オルフェにそれが届いていたのかは彼女には分からない。このまま共に逝こうと目を閉じたその時、オルフェはいきなりイングリッドを後席へと突き飛ばした。
何がと思う間もなくオルフェとの間にシャッターが降り、爆発する直前にコクピット後部が機体から切り離されて射出されていく。
オルフェが何を思ったのかは分からない。ただ彼は最後の力でイングリッドを後席に戻して脱出装置を作動させたことだけは確かだ。
爆発するカルラを見ながらイングリッドはオルフェの名を叫んでいたが、射出された脱出装置はカルラの大爆発とマイティフリーダムの起こした放電現象による障害のおかげで誰にも感知される事もなく、月の軌道上から脱出してコンピューターに設定されていた帰還ポイント、ファウンデーション領の傍を目指して高速で移動していった。
泣きながら愛した男の名を叫び続けていたイングリッドも負傷と疲労から遂には意識を失い、脱出装置に乗せられて地球へと戻っていく。突入ポイントの計算を終えた脱出装置はコクピット内を耐熱と衝撃吸収性を持つジェルで満たして搭乗者を保護すると、選択した降下ポイントへと投入を開始した。
軌道上から地球へと降下した脱出装置は減速しながらコースを維持し、ファウンデーション近くの夜の湖へと着水した。それでも完璧な着地とはいかず、最終的に湖岸近くで斜めに突き刺さる形でようやく停止することができた。
この脱出は戦闘後にいずれコンパスに気付かれるであろうが、少なくとも今この周辺には敵の姿は無く、気絶したイングリッドも目を覚ますことは無く翌日の朝を迎えることになる。
気を失っていたかのイングリッドは、近くから聞こえる声に僅かに意識を覚醒しだした。何が起きているのかとぼんやりとした頭で薄目を開けると、青空を背景に赤い髪の女性が自分を抱き上げているのが見える。何を言っているのかは聞こえなかったが、他の誰かに何かを言っているようだ。
そこまで考えて、イングリッドはまた意識を手放した。
気を失ったイングリッドの体を赤い髪の女性が湖から必死に岸に引き上げていき、金色の髪の女性とブラウン色髪のオーブ軍士官らしき男性が荷物から救急キットを取り出して駆け寄っていく。
そして湖面ではなぜかザフトの白服を着た黒髪の男が漂っていた。
これは世界のごく一部とシンの精神と胃に深刻な影響を及ぼしてしまう、極めて小規模だったが決して記録に残せない上に方々に大迷惑をかけてしまった事件の始まりであった。
ジム改 冒頭3分的な序章です。
カガリ えらい久しぶりだな。
ジム改 そのへんは本編でな。リアルで色々あったから。
カガリ そしてまた私はここなのか?
ジム改 今回は登場人物少ないから本編の出番は多いぞ。無いのは……男とのラブロマンスくらいか。
カガリ それはもう期待しとらん、んで、何がどうしてこうなってる。
ジム改 細かいことは省くがマイティフリーダムが原因だ。
カガリ なんで?
ジム改 劇場版の最後で使ってた変なビームがハイペロンビームと知ってな。
カガリ それが何で理由に?
ジム改 重核子兵器ってガンダムだと珍しいが、あれSFファンなら割と有名な古典的兵器でな。むしろ今更そんなのって感じがする。
カガリ むしろよく見る武器なのか。
ジム改 描写見ると重核子ビームというよりBLAMEの重力子放射線投射装置っぽいんだけどね。
カガリ んで、それがどうして理由になるんだ。
ジム改 重核子兵器って原子を切って対象を分解して消滅させてるように見えるという設定の兵器なんだが、それで核を分断、まあ核分裂起こすんだよね。でも核反応は抑制されてるという設定なのだが、対象が分解はされてるから核分裂は起きている。それが抑制されて周囲に向かないなら、その分のエネルギーはどこに行ったのかと。
カガリ 面倒くさいSFオタだな。
ジム改 それでまあ、そのエネルギーを云々考えてたらネタが繋がってしまったのだ。
カガリ なんて酷い理由だ。
ジム改 ネタ考える時にそうなる理由をこねくり回すのが一番楽しいのだよ。
カガリ あとなんでシンがボロボロになるんだ?
ジム改 作中のコンパスのやらかし+初代キャラたちは多分いなくなるからシンが後始末するしかないだろう?
カガリ 哀れな奴。
ジム改 あ、今回はほぼ地球上で推移するので艦隊戦とかは無いのでご了承下さい。
カガリ 無いのか。
ジム改 世界の命運とか関係無いし、平和なホノボノ旅行に。
カガリ 無理だろどう見ても。